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代々想いを継ぐ飴屋

 路地裏に構えられた工場の入口に近づくと、ほんのり漂う豊かな甘い香り。ここが、黒江BONBONを製造する、昭和55年創業のタカラ製菓である。「舌と目でお楽しみいただくファッションキャンディーを主力商品とする飴屋です」と言って迎えてくれたのは、代表取締役の光岡隆行さんだ。約40年前、日本で飴の需要が爆発的に伸び、菓子加工業を営んでいた祖父母は、周囲から飴屋の開業を度々勧めらるようになった。そこで、県外の飴屋で修行をした父・誠造さんを1代目として、祖父と父との二人三脚でタカラ製菓を立ち上げた。植物や動物などを象った愛らしい独自デザインのファッションキャンディーは瞬く間に評判となり、開業からわずか数年で全国に商品を出荷するまでに至ったという。関東の大手食品会社で経験を積んだのち、平成28年に2代目となった隆行さんは「祖父母の代から長年築き上げてきた大切な家業を継いだ気持ちです」と語る。

 
 

秀でた職人の手仕事

 作業場では、約10名の職人たちが手際よく飴づくりに勤しんでいる。生産量は多い日で2万本にのぼる。熱々の飴のもとを素早く伸ばし、的確に色を組み上げ、一押し一押し型を取れば、あっという間に見事な作品の完成だ。機械による効率化ではなく手仕事による美味しさを優先し、昔ながらの金型を用いた地釜焼きにこだわることで、香ばしく歯切れのよい飴を生み出している。  さらに、シリコンや石膏を削ってつくる仮型まで自社で手掛けることで、柔軟かつ迅速で低価格なオーダーメイドを実現。全国の名だたる企業から発注が絶えず、これまで開発した型は400種類を超える。なかでも、握りずしの形をした「すし飴」は外国人観光客にも好評だ。  現在は相談役を務める誠造さんは「お客さまに喜びと驚きをお届けするために、付加価値のある飴をつくるべく、タカラ製菓は手仕事を貫き続けています と想いを明かす。

 
 

“飴屋”のこだわり

 「様々な種類の飴を見て、自分でも作ってみたいと思ったのがタカラ製菓に入ったきっかけです。」そう話すのは、工場長を務める雑賀章さん。安心安全と衛生管理を一番大切にしながら、誰が見てもきれいで買いたくなるような飴を理想とし、見て、食べて、感動してもらえるような飴を作ることを心掛けている。昔ながらの金型を用いた地釜焼きにより、他社ではできないような、形やデザインの飴を種類豊富に作れることが、タカラ製菓の魅力だと誇らしげに笑った。「ありがとうの気持ち、感謝を大切にこれからも多くの人に喜んでもらえる飴を作り続けたい」とお客様への気持ちも話してくれた。

 
 
 

伝統を大切に後世へ

 「地域に愛される飴の伝統を守りたい」との信念を持つ隆行さん。創業当初から一級ブランドのグラニュー糖を厳選していることを受け、安心・安全に対するこだわりまで継ぎ、合成着色料から天然着色料にシフトしはじめている。さらに近年、後継者不足に悩む飴屋が多いことから、和歌山特有の伝統を守り抜いてきた飴屋に一定期間の弟子入りをさせて頂き、技術の継承に努めている。商売繁盛を願った和歌山県の行事・えべっさんの縁起物「のし飴」や、焙煎した大麦や裸麦を石臼で挽いたはったい粉を用いた郷土料理「さんしょぼ飴」も継承された伝統の一つだ。「タカラ製菓の商品は、職人さんや内職さんなど、地元の人たちの手仕事に支えられて成り立っています。その感謝の気持ちを込めて、地元をはじめとする多くの方々に弊社の商品を楽しんでいただけるよう、今後も励んでいきます」と隆行さんは決意を滲ませた。